狭められるCゾーン、体験によって広がるCゾーンの話

バジルがたくさんとれました。(上の写真はフリー素材です。)

本来は葉っぱだけ収穫するんですが、畑の撤収をしたので枝ごととってきました。

とりっぱなしでほっておくのはもったいないので、使える葉っぱは全部使うことにしました。


葉っぱを一枚一枚ちぎっていると、当然ですが同じ葉っぱはひとつもないことに気が付きます。

売り物のようなきれいなものもあれば、先が枯れているものもあるし、虫食いしているものもある。

大きいのも小さいのもある。

きれいで新鮮なものはピザのトッピングとして、少ししおれていたりして見劣りするけど加工するには十分使えるものはジェノベーゼソースの材料として使うことにしました。


きれいなもの:加工に使えるもの:使えないもの=2:7:1

くらいでした。

普通店頭に並ぶのは2割の「きれいなもの」くらいです。

あとの7割はうちのような小規模な畑では加工工場に出荷されるような「出口」はないので、使われないことがほとんどだと思います。


虫食いの穴があったり、小さな幼虫や虫のフンがついてたりもしますが、洗えば済むことだし自分が食べる分だし全然気にしません。

だけど世間的にはどうでしょうか?店頭に並んでるバジルに虫がいたら騒動になるかもしれません。


どんどん狭くなるコンフォートゾーン

世の中の風潮もあり、洗剤は「抗菌!」「除菌!」ていうのが流行りです。

「いままでの洗剤では菌は落ちきっていなかったんだっ!」

どう宣伝しても企業の戦略だからいいし、消費者が求めるのならいいんですが、僕(酒井)はこの風潮に危機感を感じています。


人の心理には安心安全を感じる領域「コンフォートゾーン」(以下Cゾーン)があります。

Aちゃんといると落ち着くし本音を言えるけど、Bくんといると愛想笑いしてしまう、というときAちゃんといることはCゾーンだけどBくんといるのはCゾーン外です。

Cゾーンは体験によって広げることができます。

Bくんと話をしてBくんと長い時間をともに過ごすことによって、BくんもCゾーンの中に入れられる可能性は十分あります。そんなときCゾーンが広がったと言えます。

逆にCゾーンは狭くなることもあります。

Aちゃんが自分の陰口を言っていると感じてしまうと、Aちゃんにはもう本音を言えなくなる可能性は十分あります。そんなときCゾーンが狭まったと言えます。


先程の洗剤の話にもどりますが、不快だとかそういう感覚的な話は置いておくと、本来人間の体表にも体内にも無数の菌がいて共生しているので、菌がいるのが自然なわけです。

菌がいることで実害がなければ、本来はCゾーンだったわけです。

でも、

「いままでの洗剤では菌は落ちきっていなかったんだっ!」

というCMによって菌がいることはCゾーン外になってしまいました。

Cゾーンは意図的に狭められます。そのほうがより強力な商品が売れるからです。

でもこれって生きやすいですか?


バジルの話に戻ります。

虫食いもない、形も揃っている、全部ツヤツヤしてるのって不自然なんです。

自然な状態って個性があってムラがあってデコボコなんです。

だけどCゾーンが狭められた結果、不自然なものを求めるようになり、不自然なものが売れるので不自然なものを生産する努力がなされます。

その生産競争はますます加速していきます。


Cゾーンを広げるのは簡単

バジルでいうと自然な状態を知ること、自然な状態のものを味わうことです。

不揃いなバジルが美味しかった経験があれば、不揃いなバジルも選べます。

虫食いのあるバジルが美味しかった経験があれば、虫食いのバジルのほうが無農薬で安心と感じ、むしろ虫食いのバジルを選ぶようになるかもしれません。


消費者の食品を選ぶCゾーンが広がれば、生産者は流通させられなかった作物を流通させられることで生産量を減らすことができ、農薬の使用量を減らすことができ、同じ耕作面積でより多くの作物を生産させられるようになり、生活の質が向上するでしょう。


体験の機会を提供し、社会全体のCゾーンを広げていきたい。

バジルを通してそう思ったのでした。


酒井


まるや(旧・進化型コミュニティーハウスかどや)

高槻市原にある築150年の古民家「まるや」。学び合って育ち合う文化を作っています。

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